• 音楽好きのための家具屋

    僕が生まれた1976年は、英国にパンクロックが誕生した年である。

    そのパンク元年生まれの僕らの世代にとって、それらのオールドスクールなパンクをさかのぼって聴くきっかけとなるのは、おそらくブルーハーツの影響だろうと思う。

    ブルーハーツといえば、ストレートだけど奥が深い歌詞と全然カッコつけないメンバーのキャラクターで、当時のロック少年少女の心をわしづかみにしたバンドだが、そのバンド・サウンドの影には、ビートルズやストーンズやフーなどの60年代のブリティッシュビートやパンクロックなど英国ロックの影響が垣間見れて、本人たちも雑誌のインタビュー記事などでそのことを公言していたのをよく見かけた。

    ブルーハーツに夢中だった中学生の僕も、当然パンクロックに興味を持った。

    僕が一番最初に聴いたパンクロックは、ご多分に漏れずセックスピストルズである。兄が、発掘ライブのCDをダビングしたカセットテープを持っていたのだ。

    しかし、正直良くわからなかった。何しろ、ピストルズのブートライブ盤なので音がすこぶる悪く、ノイズだらけで何が何だかわからなかったのだ。

    でも、歌謡曲に耳慣れた僕にとっては、何だかワルい雰囲気がプンプンする音で面白かった。

    もっとパンクが聴きたいと思い、レンタルCD屋で借りてきたのがこのザ・クラッシュの『白い暴動』だった。

    最初に聴いた印象は「何だか地味だな」という感じだったと思う。ハチャメチャなピストルズのライブ盤よりも全然おとなしく、なんかこじんまりとしていた。

    ヒロトもマーシーも「カッコいい」って言ってたけどなぁ…と思ったものだが、しかし何度か聴くうちにそのカッコよさがわかってきて、夢中になって聴いたものだ。

    過度なアレンジが全く無いシンプル極まりない演奏に乗せて流れる、ジョー・ストラマーの噛み付くような歌い方とミック・ジョーンズの朴訥とした歌い方との組み合わせのバランスが良い。それに加えて男気あふれる野太いコーラス、意外と甘酸っぱくポップなメロディー…改めて思えば、これはブルーハーツのファーストやセカンドと同じではないか。

    元々ジョー・ストラマーは101ersというパブロックのバンドをやっていて、素人ばかりだったピストルズと比べて音楽的な下地があったので、サウンド自体はストーンズやキンクスなどブリティッシュビートの伝統がしっかりと受継がれている。

    けれど、それだけだったらそこらのパブロックのバンドと変わらない。それを「いまここで言わなければ」というメッセージと共に性急なテンションで鳴らしているのが、たまらなくカッコいいのだ。

    僕は101ersのレコードも持っているので実際に聴き比べてみると、101ersは音楽的にバラエティに富んでいて玄人好みであるのに対して『白い暴動』の方が勢いまかせで稚拙な印象だ。

    だが、どっちがワクワクしてくるかといえば、やっぱり『白い暴動』の方である。聴いていて何だか元気が出てくる。

     

    前述のとおり、パブロックのバンドをやっていたジョー・ストラマーがピストルズのライブを目撃して衝撃を受け、ザ・クラッシュが結成された。

    その当時のテンションがそのままパッケージされたのが、このレコードである。

    とりあえずジョーはさっさとアクションを起こして、何かを伝えたかったのだろう。後にリリースされるサード・アルバム『London Calling』と比べると、全体的な完成度は全くもって低い。

    でも、これはそういった音楽的価値で語られるアルバムではない。

    いつの時代でも、悩める少年少女のそばに寄り添うのは、こういう火薬のようなレコードなのだ。