• 音楽好きのための家具屋

    永遠の『UKロックバンド』

    それが僕にとっての、ザ・フーのイメージだ。

    ビートルズは既にロックバンドという枠組みから逸脱しているし、未だに世界中を転がり続けるストーンズにとっては「英国の~」なんて形容詞は無意味だ。

    なんとなく、ビートルズ > ストーンズ > フー みたいな言い方になってしまったが、決してそういう意味ではない。

    ザ・フーが叩き出すビートや奏でるメロディーの奥に、ユニオンジャックが透けて見えてくるような気がする。

    アルバムジャケットなどにユニオンジャックが効果的に使われているというのもあるけど、なんとなく音の端々に英国的な凛とした佇まいを感じるのだ。

     

    そんな、永遠のUKロックバンドのファースト・アルバム。

    なんと言っても「My Generation」と「The Kids Are Alright」だ。 この2曲のロック・アンセムを収録してるだけで、もう十分に歴史的名盤である。

     

    60年代のイギリスに Moderns、通称Mods(モッズ)と呼ばれる若者達がいた。
    細身のスーツを着て、泥よけのために軍モノのパーカーをはおり、ベスパやランブレッタなどのスクーターをカッ飛ばす。

    週末には一晩中踊るためにドラッグをキめ、クラブで最新のR&Bやブリティッシュ・ビートに合わせてステップを踏む... モッズとは、そんな労働者階級の若者達によるライフ・スタイルの革命だった。
    ザ・フーは、モッズの若者達のヒーローとして登場した。

    しかしそれはバンドを売り出すためのマネージメント戦略であり、本物のモッズであったスモール・フェイセスらと違って、実際にはザ・フーのメンバーはモッズ出身では無かったらしい。
    でもそれは今じゃどうでもいいことだ。逆に言えば「My Generation」という曲の存在は、ファッションの面だけで語られがちなモッズという文化に、アグレッシヴでワイルドな価値観を与えていると思う。そのぐらいこの曲は強烈なのだ。
    かき鳴らしまくるギター、縦横無尽に暴れ回るリズム隊、前のめりに唾を飛ばしまくりながら歌うヴォーカル...こんな自己主張しまくったプレイが1曲にまとまってるのが凄いし、惚れたはれたのラブ・ソングばっかりだった当時に「年取る前に死にたいぜ!」という歌詞も斬新かつ過激だ。

    50年経った今聞いても十分に衝撃的なんだから、発売当時の過激さったらなかっただろう。

    当時、軟派とされていたマージー・ビートに対し硬派とされていたR&Bやブルースロックと比べても、あまりに「規格外」な1曲である。

    もう一つの名曲が「The Kids Are Alright」
    ハードな側面ばかり強調されがちなザ・フーだけど、ピート・タウンゼントの書くポップなメロディーもフーの魅力の一つ。

    それも前述のマージー・ビートのように、今聞くと懐メロになっちゃうようなポップさではなく、十代の少年少女がドキドキするような「カッコいい」ポップさ。

    それは「La-La-La Lies」「Much Too Much」「A Legal Matter」などのナンバーにも顕著に表れてる。
    「モッズ・バンド」としてのフーのアルバムはこの1枚だけだが、 後のアルバム「Tommy」「Who’s Next」「Quadrophenia」でも、サウンドこそは違えどピートのこういったメロディーメイカーっぷりは如何なく発揮されているのだ。

    もちろん、この2曲以外にも聴き所は満載だ。

    強烈なイントロダクション「Out In The Street」、破壊的なギターと「自分の道を行くぜ!」という歌詞がカッコいいモッズ・アンセム「Anyhow Anywhere Anyway」、地を這うようなヴォーカルが不気味なロックンロール「The Good’s Gone」、R&Bの名曲をダーティにカバーした「Daddy Rolling Stone」「Leaving Here」...どれもこれもカッコいいが、何と言っても眉唾は凶暴すぎるインスト・ナンバーの「The Ox」だろう。ギターもベースもドラムも、それにピアノまで入ってきて(弾いてるのは英国ロックの名セッション・ピアニスト、ニッキー・ホプキンス)暴れまくってるイカしすぎなナンバー。まるで暴力衝動を音像化したような曲だ。初めて聴けばひっくり返ること間違いなしだ。

    後に彼らが製作する映画「さらば青春の光」に出てくる若者達のように、当時のモッズはこれを聴きながら女の子ナンパしたり、喧嘩に明け暮れたりしたのかな...これを聴いてると、そんな楽しい想像をしたくなる。
    このアルバムは、悩める十代のための永遠のサウンドトラックだ。